皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックは「起立性調節障害と発達障害」についてです。

起立性調節障害と聞いて分かる方は少ないかもしれません。しかし、思春期の子や発達障害のある方にとっては、実はとても身近な症状なんです。

朝すぐに起きれない、寝起きボーっとしている時間が長いなどで『怠け者』と誤解されることもある症状のため、周りの方にも正しく理解してもらいたいと思います。

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青木
私も子どもの頃は朝起きれませんでしたけど、起立性調節障害だったんでしょうか。
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大竹
その可能性もありますね。他にも様々な症状がありますので、原因や判断基準、治療についても合わせてご紹介いたします。朝の悩みの解決になるかもしれませんよ。

自律神経の乱れからくる不調

起立性調節障害は朝起きれない、立ちくらみが起きやすい、頭痛や倦怠感などの症状があり、一般的には思春期に多いとされる自律神経の機能不全の一種だと言われています。

英語ではOrthostatic Dysregulation(起立調節不全)と表わすため、日本でもODと呼ぶ場合があるようです。

以前は思春期に起こる一時的なものだと考えられていましたが、重症の場合では循環調節も障害されて長期化する事も分かってきました。

循環調節

運動や怪我など身体の状態に合わせて、血流を正常に保つための調節を行う機能のことで、血圧の安定にも役立っています。

不登校や引きこもりの原因にもなり、学校生活や社会復帰にも影響を与えることが明らかになっています。そのため、早期のうちに適切な治療や環境調整を行い、正しく対応していくことが重要です。

参考元:日本小児心身医学会

具体的な症状

主な症状としては次のような事があげられます。

  • 朝起きることができず、寝起きはしばらく調子が悪い
  • 立ち上がった時にめまいや気分が悪くなる
  • 立っている時間が長いとめまいや立ちくらみがする
  • いつも体がだるく疲れやすい
  • 車などの乗り物に酔いやすい  など

起立性調節障害と気づかずに過ごして自然に良くなっているケースから、日常生活に強い影響を与えるケースまで重症度は人によって様々です。こちらをご覧ください。

このように、学校行きたくてもめまいなどが原因で行けない方がおられます。

また、それぞれの症状は変動しやすく、調子の良い時と悪い時があり一定ではないという特徴もあります

日内変動

一日の中でも体調の変動があり、主に午前中が悪く、午後になるにつれて徐々に回復していく傾向にあります

夕方ごろからは逆に活発になり、就寝が遅くなる場合もあるようです。

季節変動

季節による体調変動もあり、主に春や秋などの季節の変わり目に症状が悪化しやすいと言われています。

また、季節だけでなく天候の変化(気圧の変化)の影響も受けやすいようです。

症状別の4つのタイプ

起立性調節障害は症状のタイプによって4つに分けることができます。

起立直後性低血圧

もっとも多いとされているタイプで、立ち上がった時に血圧が大きく下がり脳の血流が少ない状態になります。

特に起床時、入浴時には注意が必要で、立ちくらみやめまいが出現しやすいです。

体位性頻脈症候群

次に多いタイプとされており、立っている時に血圧はそのままで心拍数だけが増えた状態になります。動悸や冷や汗を感じる事が多いようです。

血管迷走神経失神

立っている時、急に血圧が下がり脳貧血を引き起こした状態になります。意識がはっきりせず、そのまま気を失う事もあるため注意が必要です。

顔面蒼白、冷や汗に心拍数の低下などの症状もあり、まれにけいれん発作を引き起こし、最も重度な場合には心肺停止に至ることも考えられます

上記2つのタイプと合わせて発症する場合もあるようです。

脳貧血

脳に行く血液が減り酸素欠乏が起こった状態です。
一般的によく貧血と呼ばれる事が多くありますが、医学的な貧血とは脳とは無関係に血液中の赤血球が不足している事を表わします。

脳貧血は医学分野では起立性低血圧という言葉で表されることが多いようです。

遷延(せんえん)性起立性低血圧

もっとも少ないタイプで、立ち上がって数分が経過した後に血圧が下がり始めます。動悸、頭痛やふらつき、倦怠感といった自覚症状が出やすいようです。

事例の紹介

参考までに、起立性調節障害を持つ女の子の生活を収めた動画を見つけました。少し長い映像ですが、お母さんの説明も詳しく入っていますので時間のある方はご覧ください。

原因と要因ついて

主な原因は自律神経の乱れですが、それを引き起こす要因も様々です。

  • ストレス
  • もともと血圧が低い
  • 不規則な生活
  • 水分の摂取不足
  • 真面目で責任感が強い
  • 活動量が少なく筋力も低下している

真面目で責任感が強いと、調子が悪くても学校には行かなければと思い、さらにストレスがかかり悪化につながる場合もあります。次のように苦悩している方がいました。

https://twitter.com/wa9b1nqKOG9ajxX/status/1228088640850419715

また、筋力が低下して活動量が低下すると、さらに脳への血流も減ってしまうため、症状を引き起こしやすくなるという悪循環になりやすいのです。

見聞きした事のある例として

  • 「低血圧だから朝が苦手」という方
  • 学校の朝礼や全校集会などで時折体調を悪くして保健室に行く生徒

全てではありませんが、実はこれも起立性調節障害に含まれる場合があります。

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青木
私も立ってる時間が長いと立ちくらみのようになったことがありましたけど、大人になってからは大丈夫になりました。
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大竹
成長と共に自然と良くなる人もいるので軽度のものだったかもしれません。発症の割合をみると、より身近なものだと感じますよ。

発症の割合

軽症例を含めると、小学生の約5%、中学生の約10%、重症例は約1%だとされています。

また、女子は男子より1.5~2倍の割合で多いようです。

10歳~16歳で好発しますが特に中学生で多くなり、二次性徴に伴い発症することが多くなると言われています。

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青木
中学生の1割がなっているなんて驚きです。原因の自律神経はそれほど重要なんでしょうけど、詳しくは知りませんね。
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大竹
普段聞いたことはあっても、その働きまでは良く知られていないと思います。次は自律神経についてご説明いたしましょう。

自律神経とは

症状の原因となっている自律神経ですが、人の意志とは関係なく独立して自動的に働いてくれている神経の事をいいます。

  • 心臓機能や血管の調節
  • 胃腸の働きを調節
  • 体温や汗の調節
  • 排泄機能の調節
  • 脳の興奮や抑制の調節 など

人が眠っている時でも様々な器官が働き、呼吸や心臓も正常に動くのは自律神経の働きによるものと言え、全身のあらゆる機能を自動で調節する事が役割です。

自律神経は交感神経と副交感神経の2つに分けることができ、それぞれに別の役割がありますので次にご説明します。

交感神経

主に日中活動している時に働いている神経です。

特に、緊張している時や興奮している時、忙しくしている時などは交感神経の働きが強まっていると言えます。

  • 心拍数や血圧を上げる
  • 呼吸を早める
  • 集中力を上げる
  • 胃腸や排泄の働きを抑制する など

活動時に適した状態を保つ働きがあり、空腹や尿意・便意は活動や集中の妨げとなるため働きを抑えられるのです。

この働きが過剰になると、誰でも一度は経験したことのある現象が起こります。

  • 緊張やストレスでお腹が痛くなる
  • 便秘気味になる
  • 色々考えて眠れなくなる など

副交感神経

交感神経と対照的に、こちらは休んでいる時をメインに働いています。

  • 心拍数や血圧を下げる
  • 呼吸がゆっくりになる
  • 落ち着いて眠くなる
  • 胃腸や排泄の働きが良くなる など

身体を休めるために最適な状態を作る働きがあるので、役割としても正反対です。もちろん、この副交感神経が過剰に働くことで起こる弊害もあります。

  • 低血圧でめまいや頭痛
  • 目が覚めない、スッキリしない
  • やる気が出ない
  • お腹が緩くなる など

通常は働きが過剰になっても、自然とバランスを整える事が出来ますが、ストレスが長時間続くと調節が上手くできなくなる場合があるのです。

自律神経の働きは人によってバランスやタイプに違いがあるようで、それを手軽にチェックする方法を見つけました。興味のある方はこちらからお試しください→NHKオンライン あなたの自律神経バランスをチェック

自律神経失調症と起立性調節障害の違い

自律神経の乱れで代表的な病気で、自律神経失調症という自律神経のバランスが崩れている状態があります。

起立性調節障害はこの自律神経失調症の一種だとされているので、大まかな意味合いではほぼ同じですが、 起立時に起こりやすい不調を主症状としている点が違いだと言えるでしょう。

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大竹
起立性調節障害と自律神経についてお話してきましたが、なぜ発達障害とも関係があるのかをご説明したいと思います。

発達障害との関係

思春期に多いとされる起立性調節障害ですが、実は発達障害の場合でも発症しやすいと言われています。その理由について解説しましょう。

脳の異常の影響

もともと発達障害とは、脳の一部に先天的な異常が見られる事が原因とされています。

脳自体に何らかの異常があることで、自律神経にも影響があり、先天的に自律神経にも異常をきたしている可能性があるのです。

ストレスを受けやすく感じやすい

ストレスは自律神経に大きく影響を与えますが、発達障害があることによって、生活や学校でも様々なストレスが増える可能性があります。

  • 物事がうまくできない
  • 人と交流がうまくいかない
  • 勉強が分からない
  • 感覚が過敏で不快感が強い など

さらに、これらのストレスの処理がうまく出来ないのも発達障害の特徴です。

症状の発見が遅れやすい

コミュニケーションに難しさを感じる事が多く、自分の体調や意志を言葉で表現することが難しい場合があります。

めまいや立ちくらみ、頭痛など表現することが難しく、表面上には不機嫌に見えるだけになりやすいでしょう。

活動量が少ない場合もある

発達障害の症状にもよりますが、活動量が少ない場合には筋力も少ない可能性があります。

筋力が少ないと、全身的な血流量が減り、特に足の筋力が弱いと脳への血流が少なくなるため症状を引き起こしやすいのです。

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青木
発達障害の元々持っている特性が、起立性調節障害を引き起こしやすくしているようですね。

発達障害についてのさらに詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。

早期発見・早期治療

起立性調節障害の改善には、早期発見・早期治療がとても大事だと言われています。そこで、怪しいと思った時の相談先と治療方法をご紹介いたしましょう。

基本的には小児科へ相談

起立性調節障害は思春期に多い症状ということで、主に小児科が担当している分野になります

『めまいがあるから』と耳鼻咽喉科を受診される方もおられますが、原因と担当が違うため起立性調節障害を見つけることが出来ない場合もあるので注意しましょう。

自己チェック

受診した方が良いか分からない方のために、診断にも使われているチェック方法がありましたのでご紹介します。診察の際にはこちらを参考に症状の説明をすれば良いでしょう。

立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑います

引用元:日本小児心身医学会

治療方法

症状の度合いや医師の判断によって治療方針は異なると思いますが、主に次のような治療が行われています。

軽症の場合はまずセルフケア

まずは症状を引き起こしている要因を取り除くことから行います。

  • 規則正しい生活を心がけ、眠くなくても早めに横になる
  • 水分をしっかり摂り(1.5~2リットル推奨)塩分もやや多めに摂る
  • 毎日軽い運動(散歩など)を無理しない程度する
  • 体を起こす際は、頭を下げた状態でゆっくり起きる
  • 気温や室温が暑い場所を避ける
  • 静止状態で3~4分以上の起立は避ける

保護者や学校など周りのサポート

起きれない事や立っていられない事は、怠けているわけではありません。

体調が悪い時に無理やり起こすと逆効果になりますので、まずは本人の体調を理解することから始めましょう。わざとしているわけじゃないという、本人の苦悩が現れているツイートを見つけました。

苦しさを理解してもらえないストレスがさらに悪化の原因にもなりえますので、つらい気持ちに寄り添い一緒に出来る事から探して取り組みましょう

学校には症状を説明して、比較的体調が落ち着く午後からだけでも登校できるよう相談すると良いと思います。

本人の出来るペースに合わせるようにして、無理をさせてはいけません。

朝の起こし方は本人と相談し、朝はカーテンを開けるなどして朝日を取り入れた方が良いです。起きる前は布団の中で体を動かしてもらい、可能ならシャワーを浴びるのも効果的でしょう。

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青木
治療のためには、本人も色々と心がけなければいけない事があるんですね。
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大竹
そして何より、周りの理解とサポートが重要な役割を果たします。本人の辛さに寄り添って一緒に治していく事が大切ですね。

薬物療法

状態によっては薬物療法を行う場合があります。

  • 血圧を上げる
  • 交感神経の機能を促進
  • 心拍数を減らす

などの目的で処方されますが、基本的には薬物療法だけでは改善しないと言われており、生活習慣や環境の改善の方が治療には重要です。

薬と言ってもサプリメントの使用には注意が必要と言われています。

各種サプリメントについて的確な研究デザインによって明確な科学的根拠(エビデンス)を示した研究報告がこれまでに存在しないからである。インターネット上では、さまざまなサプリメントに効果があるように宣伝されているが、いずれも起立性調節障害に対するエビデンスはない

引用元:日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)に対する整骨や整体などの代替療法の効果についての声明 

発達障害の場合はサービス利用も検討

学校だけではなく、午後からの活動の場として次のような場所もありますのでご覧ください。

それぞれの特性や症状に合わせて活動が行えるので、起立性調節障害を併発している場合でも利用しやすく、症状の改善につながると思います。

まとめ

今回は名称としては難しい、でも実は意外と身近な症状の起立性調節障害についてご紹介いたしました。一般的にはまだ認知度は低く、理解してもらえない事で苦しんでいる方も多いようです。

ご自分のお子様や、周りに『もしかして?』と思われる方がいたらぜひ声をかけてあげてください。

皆で早く見つけ、少しでも早くつらい気持ちに寄り添う事が、その子が楽になる近道だと思います。この記事が少しでも誰かのお役に立てたなら幸いです。