皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。

今日のトピックは「発達障害と愛着障害」についてです。

岡田尊司『発達障害と呼ばないで』(幻冬舎,2012.7)という本をご存知でしょうか。

この本の中では、発達障害の増加に関わるものとして「愛着障害」の存在が紹介されています。

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大竹
「愛着障害」って何でしょうか?
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青木
愛着障害とは、幼い頃に過ごした環境が要因となって起こる困難の名前です。
発達障害とよく似た特徴の症状があるそうですよ。

発達障害の症状との類似性から、両者が混同されたりすることもあるようです。

幼い頃の環境に要因があるといわれているので、小さいお子さんのお母さん・お父さんであれば、今のうちから愛着障害について知っておいた方が良いかも知れませんね。

この記事では、発達障害と愛着障害の関係にスポットを当ててお伝えしていきます。
『発達障害と呼ばないで』を既に読んだことのある方も、これから読む方も、愛着障害について一緒に勉強していきましょう!

『発達障害と呼ばないで』はどんな本?

『発達障害と呼ばないで』は、幻冬舎から2012年7月に出版されました。

作者である岡田尊司さんは作家活動だけではなく、精神科医としても第一線で活躍されています。

その著作には「発達障害」をテーマにしたものが多く、「愛着障害」についても多数執筆されています。
この『発達障害と呼ばないで』も、そうした発達障害と愛着障害についてテーマを掘り下げられた1冊です。

導入は、近年、特に先進国において発達障害が増加傾向にあることから触れられています。
「発達障害」というものの存在が知られ診断に訪れる人が増えただけではなく、社会構造や、子どもを取り巻く養育環境にも発達障害が増加した原因があるのではないかと説かれています。

これまで、発達障害と養育環境を結びつけて考えることは、どこかタブーとされてきました。
発達障害は「生まれつきの脳の特徴が原因である」「育て方は関係ない」といわれていますが、それを「愛着障害」という視点でもう一度原因を探り直そうとするのがこの本です。

お子さんが困難を感じている本当の原因は、愛着障害にあるかも知れません

そして加えて、社会の在り方が少し変われば、個性をどこまでも伸ばし才能を開かせられるかも知れません。
正しく原因を見つめることは、改善にとって必要なことだといえるでしょう。

発達障害と呼ばれる子供たちの問題を見つめ直し、社会からは「異なる」として弾かれがちな個性豊かな才能を、今一度深い愛情で育ててみませんか?

『発達障害と呼ばないで』はそのチャレンジの助けとなるでしょう。

【書籍情報】

書名:『発達障害と呼ばないで』

著者名:岡田尊司

出版社:幻冬舎

出版年月日: 2012/7/30

形態:新書サイズ 266頁

言語: 日本語

ISBN-10:4344982681
ISBN-13:978-4344982680

【外部リンク】

幻冬舎(Topページ)


親書版『発達障害と呼ばないで』 書籍情報のページ


電子書籍版『発達障害と呼ばないで』 書籍情報のページ

発達障害と呼ばないでposted with ヨメレバ岡田尊司 幻冬舎 2012年07月 楽天ブックス楽天koboAmazonKindle

↓岡田尊司さんの他の著作はこちらをご参考下さい
【外部リンク】幻冬舎 「著者情報 岡田尊司」

↓精神科医としての岡田尊司さんの活動はこちらをご参考下さい
【外部リンク】岡田クリニック

愛着障害について知ろう!

愛着障害って何?

「愛着障害」とは、養育者と子どもの関係において愛着の形成がうまくできないことによって起こる困難を指す心理学の用語です。
「アタッチメント障害」とも呼ばれます。(attachment=「愛着」の意味)

「愛着」は、他の生き物などに対して築かれる情緒的な結びつきに対して使われる言葉です。
心の交流・絆(きずな)といっても良いかも知れませんね。

人間は生まれた瞬間から成長していきますが、体が成長するだけではなく、心も同じく成長していきます。

心は他の生き物(特に同じ人間)との触れ合いによって育まれます。
この、他の生き物との間に築かれる心の交流が少ないと、心はうまく発達することができません。

それが困難として表面化してくるのが「愛着障害」です。

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青木
愛着の形成には主に母親との関係が指摘されますが、父親や、その他の養育者との関係にも当てはまるそうです。

愛着障害によって起こる問題

愛着障害によって起こる問題は、主に対人関係や社会性に現れます
他の人とのコミュニケーションが上手くいかなかったり、社会に適応しにくくなったりするなどです。

【主な問題の例】

  • 他人と良好な関係を結びにくい
  • 感情をコントロールしにくい
  • 自己肯定感が低くなりやすい
  • 精神的に不安定になりやすい
  • ストレスが体の不調に繋がりやすい  など

幼少期では、これらの問題が「初対面の大人について行ってしまう」「他の子を叩く・癇癪(かんしゃく)を起こす」などに現れることがあります。

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大竹
保育園や幼稚園、小学校に入って周囲の子ども達や他の大人と接する機会が増えてから、問題が表面化することもあるみたいですね……。
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青木
大人になってからも、「特定の相手と親密になれない」「対人関係でトラブルを起こしやすい」などの困難が続き、悩んでしまうこともあるようですよ。

愛着障害の原因

心理学における愛着理論では、赤ちゃんは特定の養育者とのコミュニケーション(愛着)を繰り返すことで他者との関わりを覚えていきます。

例えば、「お腹が空いて泣くと、母乳やミルクをもらえる」「相手の方を向くと、微笑みかけてもらえる」などです。

愛着障害の原因は、この生後~3歳頃までの乳幼児期の過ごし方にあるといわれています。
主に、赤ちゃんを取り巻く環境が原因となりやすいようです。

【愛着障害になる可能性がある環境】

  • 育児放棄で、充分な世話をしてもらえない(いわゆるネグレクト)
  • 母親(または他の養育者)からのコミュニケーションが少ない
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大竹
緊急対応を要するほどの虐待でなくても、養育者がテレビやスマートフォンに夢中で片手間に世話をするなどでも、愛着不足になってしまう可能性があります!

赤ちゃんを抱っこし体の触れ合いをすることは、赤ちゃんに「安心」の原点をつくることにも繋がるそうです。
安心できる場所をまず確保することで、やがて成長した赤ちゃんは他のものへと興味を移していきます。

抱っこなどの触れ合いが不十分であった場合、赤ちゃんは安心できる場所を得る事ができません。
幼いうちのこうした体験が、成長してから「愛着障害」として顔を出すのです。

サイレントベビー

泣いてもミルクをもらえない、笑っても笑い返してもらえないといった経験が続くと、赤ちゃんは「泣いても無駄だ」「笑っても無駄だ」と学習してしまいます。

そして、自分の要求を伝えることをしなくなり、次第に泣かなくなっていきます。

泣かない赤ちゃんは扱いやすいかも知れませんが、養育者との交流を諦めてしまったのですから心が育ちにくくなります。
こうしたケースの赤ちゃんは「サイレントベビー」と呼ばれています。

子どもへの愛着が湧かない「ボンディング障害」

子どもを愛そうと努力をしても、子どもへの愛着が湧かずに悩む母親もいます。

「ボンディング障害」(bonding=対児愛着)といい、産後うつなども原因とされています。

母親がボンディング障害であると育児放棄(ネグレクト)に繋がってしまうケースもあり、子どもが養育者の愛情を受けられないことで起こる愛着障害とは密接な関係があるともいえます。

産後うつとは?

出産を終えた女性が、産後数週間~数ヵ月に渡って心理的な障害を発症する状態です。悲しくなる・唐突に泣き出すなど、感情が不安定になります。

発達障害と愛着障害について

発達障害とよく似た特徴を持つ

愛着障害から来る症状の一部は、発達障害とよく似た特徴を持っているといわれています。

【注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴と似ている例】

  • 養育者以外の大人に馴れ馴れしく、べったりとくっつく
  • 初対面の大人にもついて行ってしまう など

【自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴と似ている例】

  • 嬉しい・楽しいといった感情が表に出ることが少ない
  • 他人との交流に関心がない
  • 大人に頼るのが苦手   など
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青木
発達障害が生まれつきの脳の機能に特徴があることが原因とされている一方で、愛着障害の原因は乳幼児期の環境にあります。
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大竹
全く異なる原因から来ている症状を混同してしまうと、正しい対処をすることができませんよね?
改善はおろか、症状をより悪化させてしまうおそれがあるのでは……?
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青木
そうですね……。医師による診断の現場では、愛着障害と発達障害について慎重に見極めが必要とされているそうですよ。

発達障害の症状とよく似た症状を持つ愛着障害ですが、医学では「反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)」「脱抑制性対人交流障害」の2種類が、愛着形成の不全によって起こる障害として扱われています。
(診断マニュアル「DSM-5」による診断名)

発達障害とは?

生まれつき脳の発達に特徴があり、「できること」と「できないこと」の差が極端に大きく開いてしまっている障害です。
様々な種類があり、大きく分けて、注意欠陥多動性障害(ADHD)・自閉症スペクトラム(ASD)・学習障害(限局性学習障害/限局性学習症,LD)の三つに分類されます。

参考元:みんなのメンタルヘルス(厚生労働省) 「発達障害」のページ

発達障害と愛着障害を両方持つケースも

発達障害と愛着障害を重ねて発症してしまうおそれもあるようです

発達障害の特性によっては、コミュニケーションが苦手であったり、行動が独特であったりすることがあります。
これらが養育者を困惑させ、愛着形成が満足に行えなくなるケースもあるでしょう。

また、発達障害のひとつ自閉症スペクトラム(ASD)は、1歳頃から予兆があるといわれています。

【自閉症スペクトラムの予兆】

  • 養育者と目が合いにくい
  • あまり笑わない
  • 名前を呼んでも振り向かない
  • 一人遊びが多い  など

養育者が「コミュニケーションを取りにくい子だ」と感じると、交流が少なくなってしまうかも知れません。
一人遊びが多いことも、養育者との交流の機会が減ってしまうことに繋がります。

ある程度成長してからも、愛着の形成が難しい場合があります。

発達障害を持った子どもは苦手から困難を抱えやすく、周囲とのトラブルや失敗などを繰り返してしまったりします。
その為、養育者を含む周囲から叱られてしまうことも多くなりがちになり、コミュニケーションがより苦手になってしまうこともあり得るのです。

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大竹
乳児期からのこうした経験が積み重なって、発達障害に愛着障害を重ねてしまう子もいるそうです……。

症状の中に潜んでいるかも知れない愛着障害

発達障害の診断に間違いがなくても、その症状には愛着障害が潜んでいるかも知れません。

発達障害を持っている場合、周囲との物事の捉え方の違いなどから、本人は日常的にストレスや不安を感じやすい立場にあるといえます。
このストレスや不安がパニックや自傷行為に繋がってしまったり、うつ病や引きこもりなどの二次障害の発症に繋がってしまうケースも少なくありません。

一方で愛着障害においても、ストレスや不安がつきものです。
こちらも、対人関係での不安やトラブルからのストレスによって、自覚するほどに症状が悪化するのです。

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青木
発達障害と愛着障害を同時に抱えていると、どうでしょうか?
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大竹
どちらもストレスや不安感が強そうですよね……。
症状がごちゃ混ぜになってしまいそうです。
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青木
そうですね。
対人関係で強い不安を感じた時、発達障害が原因なのか愛着障害が原因なのか、症状の切り分けが難しくなってしまうかも知れませんね。

生まれつきの脳の発達の特徴からくる発達障害への対策と、乳幼児期の環境からくる愛着障害への対策は異なります
もし愛着障害であることを見逃されて、発達障害へのケアだけが成され続けたとしたら、悪くすれば症状が悪化してしまうこともあるかも知れないのです。

発達障害のストレスと愛着障害

他者と触れ合う時、脳内では「オキシトシン」と呼ばれる成分が分泌されるそうです。

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青木
オキシトシンは別名「愛情ホルモン」とも呼ばれています。
女性が妊娠・出産・授乳を行う際に大量に分泌され、女性の母性行動を引き出しているともいわれています。
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大竹
愛情……あっ、ひょっとして「愛着」にも関係あったりしますか!?
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青木
ありますよ!
お母さんが赤ちゃんを抱っこするなどの「愛着」の行動を取る時、脳内で働くのがこの「オキシトシン」です!

オキシトシンは、赤ちゃん側にも作用します。
母親との触れ合いを感じた赤ちゃんの脳内にもオキシトシンが分泌され、免疫力が上がったり、情緒が安定したりするともいわれています。

オキシトシンの分泌は、成長してからも起こります。
他者との触れ合いで分泌されるというオキシトシンですが、その作用はストレスの緩和にも役立っているそうです。

発達障害による周囲との違いにストレスを感じても、深い心の繋がりによって常に安心を感じられる環境にあれば、そのストレスは緩和されるでしょう。
ストレスの緩和が精神を安定させ、困難に対しても前向きな気持ちで取り組めるようになるかも知れません。

しかし、愛着障害があり、他者との間に心の繋がりが得られにくい状態である場合はこの精神の安定が得にくくなってしまいます
日常的にストレスや不安にさらされることで気分が落ち込み、困難に対して後ろ向きの気持ちを持ってしまうこともあるかも知れません。

ここでも「愛着」の有無で大きな差が出てしまうのです。

今からでも出来ること

愛着障害の疑いがあれば、どうすれば良いのでしょうか?

赤ちゃんの頃に戻って愛着を形成し直すことは残念ながらできません。
その代わりに、今からできることをしましょう!

心の交流の時間をつくる

「誰かに認めてもらえること」が安心に

愛着障害の原因は乳幼児期の過ごし方にあるといわれています。
過ぎてしまった時間を戻すことはできませんが、乳幼児期に得られなかった「安心」は、乳幼児期ほどの効果は無いかも知れませんが成長してからでも得る事ができます。

その方法は、「誰かに認めてもらうこと」です。
他者との肯定的な心の触れ合いが自信に繋がり、安心に繋がるのです。
もし愛着障害を持っているのがお子さんであれば、母親(または他の養育者)とのコミュニケーションが最も良いかも知れません。

絶えていたコミュニケーションを急に取るのが難しい場合は、「おはよう」の挨拶をしたり、ちょっとした出来事に「ありがとう」と伝えてみたりすることから始めてみませんか?

言葉のいらないコミュニケーションも

お子さんか養育者のどちらか、あるいは両方が自閉症スペクトラム障害(ASD)を持っている場合、こうしたコミュニケーションが苦手であることもあるでしょう。

言葉での交流が難しい時は、「タッチケア」もひとつの方法です。
タッチケアとは、スキンシップの一種です。
母親が赤ちゃんにしてあげるベビーマッサージなどが例として挙げられますが、大人になってからでもこうした触れ合いは効果的であるようです。

触れ合いながらゆったりと一緒の時間を過ごすことで、言葉を交わさなくても心と心のコミュニケーションをはかることができます。

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大竹
互いにマッサージし合ったり、一緒にお風呂に入ったり、手を取り合って少しダンスを踊ってみるのも良いコミュニケーションとなるかも知れませんね!

↓赤ちゃんへのタッチケアの例

参考動画:YouTube「ジョンソンベビーの簡単ベビーマッサージ 「タッチケアのうた」」 
Jerry Grady

↓手軽にできるハンドマッサージはどうでしょうか?

参考動画: YouTube「オイルマッサージセラピストが教える♪疲労回復ハンドマッサージ⭐︎皆様 癒されてください♪[ oil massage hand therapist how to]」
KAYAスタジオ

安心を得られる場所をつくる

発達障害も愛着障害も、困難は主に「外」で起こります。
社会に出ることで、対人関係や周囲との物事の捉え方の違いに直面して多くのストレスにさらされます。

この「外」の世界から家に帰って来た時、安心してコミュニケーションが取れる場所であればホッとするでしょう。

発達障害の特性によっては、不安感や上手くできない葛藤が暴力的な形になって表に出ることがあります。
そういった時にも、「暴れたいくらい不安だったね」「上手にやりたかったね」と気持ちに寄り添うことで、心の交流をすることができるそうです 。

受診先・相談先

愛着障害の疑いがあれば、専門の医療機関へ相談することもできます
精神科が対象となるようです。

発達障害の症状と似ていることもある為、場合によっては専門家の判断が必要となるかも知れません。

合わせて発達障害の様子もあるようでしたら、こちらも専門の医療機関や公共の窓口で相談することができます。
発達障害である確証がなくても、『不安があれば気軽に相談しても良い』と相談窓口を設けている団体もありますので、探してみて下さい。

↓こちらの外部リンクからも発達障害の相談窓口を探すことができます

【外部リンク】
国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報・支援センター
「相談窓口の一覧」のページ

まとめ

それでは、これまでの情報をまとめてみましょう。

  • 愛着障害の症状の一部は、発達障害の特徴によく似ている!
  • 愛着障害の原因は、0歳~3歳頃の養育環境にある!
  • 心のコミュニケーションを取ることで、今からでも改善できるかも知れない!
  • 医療機関への相談も検討してみましょう!

社会的な認知を得て来た発達障害に比べ、愛着障害はまだまだ世の中に知られていません。
症状が出ていてもそうとは気付かれずに、本人も周囲も悩んでしまうこともあるでしょう。

発達障害の情報を知ると共に、ぜひ愛着障害のことも知って欲しいと思います。
悩んでいる人がいることが社会に浸透して、より柔軟なサポートが受けられる環境になると良いですね。

岡田尊司『発達障害と呼ばないで』(幻冬舎)、まだ読んでいない方はこの機会に読んでみて下さいね!

もっと詳しく・他の情報も知りたい方は、
こちらのサイトも参考にしてみて下さい!

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