皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「大人の発達障害を疑った時に本人に伝えるべきか?」についてです。
本人に伝えるべきか悩んでいるのですが…。
本人に伝えるべきかの判断基準や伝え方についてアドバイスさせて頂きますね。
発達障害は大人になるまで、周囲はおろか本人さえも気づかないこともあり、最近では発達障害の認知も進んできたことから、本人は気づいていなくても、周囲の人が「この人は発達障害なのでは?」と感じる場面も多くなってています。
発達障害の特性は周囲へ迷惑をかけてしまう場合もあり、本人に伝えるべきかと悩む方もいるので、この記事では「本人に伝えるべきかの判断基準」や「本人への伝え方」について解説していきます。
この記事を書く私自身も発達障害(ADHD)を大人になってから診断されており、自身の経験も交えながらお伝えしていくので、本人に伝えようかと悩んでいる方は参考にしてみて下さい。
目次
大人になって発症している訳ではない
発達障害についてあまり知識のない方の中には「大人になって発達障害を発症した」と認識されている方もいますがこれは誤りです。
発達障害は先天性のもので、大人になってから発現するものではありません。
と同時に、発達障害は「先天性の障害」なので治ることはありません。
ですが、療育やワーキングメモリで脳を鍛えたり、工夫や改善、特性を逆に活かすことで、問題が出にくかったり、社会で活躍できる可能性もあるでしょう。
実際に、発達障害を公表、もしくはその傾向がある有名人には、トム・クルーズさん、スティーブ・ジョブズさん、勝間和代さん、爆笑問題の太田光さんなどがいます。
ただ、ここで少し気を付けておきたいことがあります。
昨今発達障害の偉人などの話が先行して、発達障害=天才が多い、というような情報が溢れているように思いますが、 こういった才能を持ち合わせる人はごく一部です。
当事者やその関係者の方には少し辛い話かもしれませんが、全ての発達障害をもつ人が「IQが高い」「特別な能力がある」訳ではありません。
というのも、この記事を書く私自身も発達障害(ADHD)を診断されている当事者なのですが、勉強はできないタイプでした。
発達障害が判明した時は「発達障害には才能がある」という情報に期待して、自分の才能探しなどをしましたが、特別そのような能力は持ち合わせていませんでした。
この経験から思うのは、誤った認識は失望や誤解を生む可能性がありますので、注意しておきたい所です。
しかし、だからといって何もできない訳ではありません。
発達障害をもつ人が意識すべきは、発達障害の特性を理解し、改善したり伸ばしたりする工夫を考えて行動することです。
そうした、「自分で考える力を身に付ける」ことで自分らしい生き方が見つかることでしょう。
どうして大人になるまで発達障害に気づかないの?
発達障害は大人になるまで気づかれないことも多いのですが、実際には学校の1クラスに2~3人程はその傾向があるという調査結果があります。
大人になるまで発達障害に気づかないケースには、以下のような原因があります。
- 子供の頃は発達障害の特性が目立たない
- 発達障害かを見分けるのは難しい
- 昔は発達障害への認知が低かった
- 勉強の成績が良い場合もあるため気づかない
それぞれの理由について詳しく解説していきましょう。
子供の頃は発達障害の特性が目立たない
子供の頃は親や学校の先生などのサポートがあったり、まだ周囲の目が寛容なため発達障害に気づかない場合もあります。
周囲も「ちょっと変わってる子」と思うくらいで、発達障害とまでは考えないことも多いのです。
ですが、大人になると仕事や周囲の人との関係は複雑、かつ高度なコミュニケーション能力、臨機応変な対応や、自分で考え解決する力などが必要になってきます。
こういった場面で、発達障害の特性や凸凹が表面化することで発達障害に気づく、といったケースが増えています。
以下の記事では発達障害の特徴や、大人になってから発達障害に気づくケースについて解説しているので参考にしてみてください。
発達障害かを見分けるのは難しい
発達障害かどうかを見分けることは専門家や医師でも難しく、ましてや一般の方がはっきりと見分ける事は困難である場合がほとんどと言われています。
中には、コミュニケーションやしぐさが独特ではっきりわかる場合もありますが、多くの場合その特徴が見えずらく、気づかれないことも多いのが現状です。
実際に、日常では様々な困難な特性が出ていても、病院で診療を受けた所、発達障害の診断は下りずに「グレーゾーン」と告知され、成人後に社会生活で困難を抱え、再び病院で診察を受けた所、発達障害の診断が下りるケースもあるのです。
発達障害の症状が見られるものの、診断基準を満たしておらず、発達障害の診断を付けられない状態のことをいいます。
昔は発達障害への認知が低かった
日本で発達障害が広く認知されるようになったのはここ数年のことで、十数年前までは、発達障害の社会認知はほとんどありませんでした。
これにより、子供の頃は周囲の人も発達障害を認知しておらず、「親の育て方が悪い」「努力不足」などと誤った認識をされることもよくありました。
こういった人達が、大人になってから発達障害のことを知り、病院に行った所、発達障害と診断されるケースがあるのです。
勉強の成績が良い場合もあるため気づかない
発達障害は知的障害ではないため、IQが高く学校の成績が良い場合もあります。
この場合、学校では問題視されることなく、発達障害の特性に気づかれずに大人になるといったケースも少なくありません。
コミュニケーションや生活に問題があっても、勉強などができると特性が目立たなくなり、あまり心配されないケースもあるのです。
発達障害傾向チェックリスト
ここでご紹介するのは、発達障害でよくみられる症状を障害ごとにチェックリストにしたものです。
該当する特徴が多ければ発達障害の可能性もあるでしょう。
身近な人が発達障害なのか見当もつかないといった際に参考にしてみてください。
ただし、あくまで目安であり、個人で発達障害を特定することは不可能ですので、心配な方は病院を受診されることをおすすめします。
広汎性発達障害
主にコミュニケーションや社会性において困難な特徴がみられ、 自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害などが総称として広汎性発達障害と定義されています。
- 相手の冗談や比喩表現がわからない
- 失礼なことを言って人を怒らせてしまう
- 他人に関心が無く、人の話を聞かない
- 悪意が無く、相手が傷つくことを言う
- こだわりが強く決まった自分のルール、順序に従う
- 同じことを何度も繰り返す
- 急に予定が変わるなどするとパニックになる
- 空気を読むといった暗黙のルールがわからない
- 状況や相手に合わせて行動することができない
- 会話の際、目線が合わない
- 辞書のように堅苦しい言葉や難しい表現が多い
- 清潔感が無いと言われる
- 五感が敏感で苦痛を感じる
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
注意欠陥と多動性のどちらか、もしくは両方の症状が出ているケースがあり、ここではそれぞれの特徴を分けてチェックリストとしています。
注意欠陥
- 忘れ物が多すぎる
- モノをよく失くす
- 気が散って物事に集中できない
- 大事な会議や学校の授業などで寝てしまう
- 注意していてもヌケ・モレが多い
- 約束や予定をよく忘れる
- よく遅刻する
- ケアレスミス、おっちょこちょいな所が多い
- 複数のやることがあるとタスクが崩壊する
- 状況に応じた臨機応変な対応ができない
- 片付けや整理整頓ができない
- やりたいことや好きなことに集中し過ぎる
- 睡眠障害がある
多動性
- 後先を考えず衝動的に行動してしまう
- 思ったことを不用意に発言してしまう
- 人と話しているのに他のことを考えてしまうことが多い
- 一つの場所でじっとしていられない
- そわそわして常に身体を動かしている(貧乏ゆすりなど)
- 同じことを繰り返しているとミスが多くなる
- 感情が不安定になりがち
学習障害
学習障害は以下3つの特徴に分類され、1つの特徴のみ、もしくは複数の特徴を併せもつ場合もあります。
読字障害(ディスレクシア)
- 字が歪んだり、浮いて見える
- 音韻が理解できない(例:タコと凧の発音は違う)
- 似ている文字を見分けるのが難しい(「あ」と「お」など)
- 文字の意味の繋がりが理解しづらい
- 音読が苦手
- 指で押さえないと読んでいる所を見失う
書字表出障害(ディスグラフィア)
- 文字や文章を書くのが難しい
- ひらがな、カタカナ、漢字をなかなか覚えられない
- 文字の大きさがバラバラ
- 句読点の使い方がおかしい
- 文字の一部をよく付け忘れる
- 鏡文字や雰囲気で適当な文字を書く
算数障害(ディスカリキュア)
- 数の大小が理解できない
- 数や九九を覚えるのが遅い
- 繰り上がり、繰り下がりが理解できない
- 簡単な筆算ができない
- 図形やグラフが理解できない
- 文章問題が苦手
本人に自覚が無い時は伝えるべき?
ここが、この記事の本題となる所ですが、発達障害の特徴を把握した上で、身近な人に特徴が多くみられる場合、本人に伝えるべきか否かを迷う方もいるでしょう。
この問いに対する結論としては、日常生活に大きな問題がある場合は伝えるべきで、特に問題を感じていなければ伝えなくても良いでしょう。
発達障害のことを知ると、障害名や診断を受けることに意識が向かいがちですが、障害があるか無いかよりも大事なのは、「問題なく日常生活を送れているか」という点です。
実際に発達障害の特性が強く見られる人でも、社会で活躍したり成功したりする方はたくさんいらっしゃいます。
そのような方に発達障害があるかないかはあまり問題ではありません。
しかし、発達障害と思われる特性により、悩んでいたり、社会生活が送れない、周囲に迷惑がかかっている、場合によっては危険、という状況ならば本人に伝える必要があるでしょう。
発達障害を本人に伝えて、理解してもらうメリットは以下のようなものです。
- 悩みの原因がわかりスッキリする
- 悩みの原因が見つかり対策が立てられる
- 発達障害による症状を改善できる
- 二次障害を防止、もしくは改善できる
それぞれの内容について解説していきましょう。
悩みの原因がわかりスッキリする
発達障害が疑われる人は子供の頃から「他の人が当たり前にできることが自分にはできない」「自分は頭が悪い」と劣等感が強かったり、自己肯定感が低い傾向があります。
これは子供の頃から困難を感じる事が多く、人から非難や注意されることが多かったことによるものです。
そんな、「人とは何かが違う」と感じながらも鬱々と悩み続けている人へ発達障害の存在を伝えることで、その原因がわかり、気持ちの整理がつくケースがあります。
実際、当事者である私も劣等感の塊でしたが、大人になってから発達障害を知り、自分の悩みの原因に合点がいきました。
発達障害を告知されたことはショックではなく、何か見えないものと闘っている辛さから、見える敵と闘える心理的な安堵感を感じたのを覚えています。
悩みの原因が見つかり対策が立てられる
発達障害であることがわかると、自分の得意、不得意やその特徴が見えてきます。
これにより特徴への対策や改善方法、工夫を考えられるようになることで、状況を好転できる可能性がグッと上がります。
そうすれば、生活や人生がより生きやすく、楽しくなるでしょう。
発達障害による症状を改善できる
発達障害であることがわかり対策が立てられるようになることで、症状を改善したり、場合によってはその特性を活かせるケースもあります。
悩み続ける状態から改善のフェーズへ移行できることはとても意義あることと言えるでしょう。
二次障害を防止、もしくは改善できる
発達障害は二次障害に繋がりやすく、うつやひきこもり、パニック障害などを併発しやすい傾向があることがわかっています。
発達障害を知らない人が精神疾患で悩み、病院を訪れた所、発達障害が判明するという事例も数多く報告されていますので、もし社会生活に困難をきたしていれば、なるべく早めに発達障害の疑いを伝え、病院で診察してもらうことが賢明でしょう。
早い段階で発達障害という原因を知ることで、前述したように「悩みの原因がわかりスッキリ」して二次障害を起こす前に改善することができますし、既に二次障害になっていたとしても、そこから発達障害の特性を改善することで生きやすくなり、結果として精神疾患を緩和することに繋がります。
発達障害が疑われる相手への伝え方
伝えるタイミングや時期
伝えるタイミングで避けたいのは、失敗した直後や、ひどく落ち込んでいる時です。
このような時は人の言葉を聞ける心理状態ではないので、反発したり、そもそも話を上の空で聞いてしまうことも考えられます。
発達障害を本人に伝える意義は本人や周囲の困りごとを改善したり、より自己理解を深めてもらうためです。
発達障害が疑われる大人へ伝える最も良いタイミングは、自己分析が必要な場面や、発達障害を知る事で後に役立つ以下のような時でしょう。
- 就職、転職を考えている時
- 何か困難を抱えている時
- 子供が生まれ親になる時
- 新たな仕事やチャンスがある時
こういったタイミングで発達障害の存在を伝えることで、自己分析に活かすことができ、今後の仕事や人生の方向性を考えるのに役立ったり、どうすれば困難を克服できるか、上手くいくかといった対策に役立つ場合もあります。
伝える時に気を付けること
伝える際に気を付けることは、できるだけネガティブな言い方とならないようにすることです。
例えば、何か失敗したことに対して衝動的に「発達障害だから」と言ってしまったりすることです。
否定するような言い方は絶対に避けるべきであり、お互いの信頼関係を損ねることにもなりかねません。
また、発達障害は病院で診断されるまでははっきりわかりませんので、一方的な決めつけや思い込みもできるだけ避けるようにして、あくまで、「発達障害の可能性がある」という言葉に留めて伝えるようにしましょう。
良い伝え方としては、普段から本人のやりがちな特徴について説明し、発達障害の可能性があること、発達障害がわかることで「こんな改善ができる」「こうすれば活かすことができる」といった前向きな捉え方で伝えるようにすると良いでしょう。
なぜならこうした伝え方なら、本人にも周囲にもメリットがあり、今後も自分にとって役立つ可能性があることに気づけるからです。
実際に、発達障害の診断が下りて精神障害者手帳を取得した場合でも、デメリットと言えることはほぼ無いと言えるでしょう。
私も過去に手帳を取得していた経験がありますが、その理由は以下です。
- 発達障害と診断され精神障害者手帳を取得したとしても自ら公表しない限り仕事先など公に知られることはない
- 公的機関や民間施設などの割引が受けられたりして金銭的援助が受けられる
- 障害者雇用での仕事を探すことができる
- 税金の障害者控除が受けられて家計の負担を減らせる
あえてデメリットを挙げるとすれば、障害者と診断された本人の心理的な抵抗があるといったことですが、自己をより知る事ができ、先に述べたメリットを享受できることを考えれば、大きな問題では無いと言えるのではないでしょうか。
親が発達障害だと子供へ遺伝する可能性が高い
発達障害は遺伝性の高い障害と言われています。
実際に発達障害についての研究や書籍を数多く出されている精神科医、星野仁彦医師や、国際医療福祉大学病院の門田行史医師なども遺伝性の高さについてメディアや論文、講演会等で指摘されています。
かく言う私の母もADHDの不注意の特徴が多分にあり、物忘れや予定をすっぽかすことは日常茶飯事でした。
診断は受けていませんが、本人に発達障害の話をしたら納得していたものです。
発達障害は早期に発見することで、その後の療育や子育てで適性に合わせた教育、トレーニングなどをしてあげることができますので、親の発達障害が懸念される時は、子供も一緒に診察してもらうことをお勧めします。
放課後等デイサービス アップ
当サイトを運営する「運動・学習療育アップ」では、 「集団生活の中で生きる力を身につけさせる」を理念として、集団生活やコミュニケーション力、感情表現、記憶力向上、集中力向上といった、発達障害により不足している能力を高めるプログラムや活動を行っています。
発達障害の子供に「生きる力を身に付ける」一助になれるかもしれませんので、もしご興味があればお気軽にお問合せください。
まとめ
身近な人に発達障害の可能性があると感じた際は、この記事でご紹介した、発達障害の特徴を参考にしてみてください。
ですが、くれぐれも発達障害かどうかの判断は、個人でできるものではありませんので、病院に行き診断を受けましょう。
もし本人の生活に問題があり、伝える必要がある時には、できるだけ冷静に伝え、前向きな話し方を心掛ければ建設的に話ができるのではないでしょうか。
発達障害という障害名にはセンシティブな部分もありますので、あえて話をするのは勇気のいることですが、本人も周囲もよりハッピーに生きるため、自分を見つめ直すという意味で捉えて頂ければ幸いに思います。